4月に防大に入校して2ヶ月が過ぎた頃、防大生としての生活に少し慣れ始めた頃です。少しは気を抜けるポイントも出てきたりしますが、ほんの一瞬です。
気を抜くと大きなヘマをする
慣れてきたといっても、生活が体に染みついたといえるまでには至っていないこの時期です。気を緩めると大きなヘマをしでかしたりします。
基本的には1年生の間は、成人or未成年関係無く飲酒喫煙は禁止されています。それでも同期には浪人して入校してきた人もいて、休日に外出した時などにこっそり飲んでいたりします。外で飲酒しても、酔っぱらって帰校しなければ(つまり飲酒の現場を見つからず、飲んだ事がばれない程度にシラフでいられれば)特に問題にはなりません。
酔っぱらわなければ…といっても、そこは若干19~21歳の若者です。自分の酒量を把握できる程の大人な飲み方がいつもいつも出来るわけではありません。
私も同期と一緒に休日に外出した時のことです。隠していた私服に着替えて、バーに飲みに行きました。早めの夕食を採り、夜の点呼に間に合うように余裕を持って飲んだつもりでした。私自身は自分のサイフでお酒を飲むのが初体験で、ワクワクしながら飲み始めました。
ここで同期が気分が良くなってしまいました。同期は1浪で、当時の私よりお酒の知識が豊富にあり、色々なお酒を教えてくれました。教えてくれるまでは良かったのですが、二人してテキーラだぁ~ロンリコだぁ~と調子に乗って飲んでしまったのです。
私が「あ、俺酔ってきたな」と気がついた時には、同期は完全に酔っぱらいです。その時点でヤバイことにやっと気付き、急いで店を出て酔いをさます作戦が必要となってしまいました。
最初は電車にも乗れないかもと思っていた同期の状態ですが、大量の水を飲ませて少し休ませたところ、何とか回復して電車には乗れました。電車→タクシーで何とか帰校したものの、酔いが完全に抜けているわけではありません。放っておくと点呼でバレバレです。
仕方なく、私の対番と同期の対番に事情を説明し助けを求め、水を飲ませ、冷水シャワーを浴びせ、どうにか点呼を持ちこたえることができました。鬼の4年生は気付いていても見て見ぬふりをしてくれたようですが、当たり前に対番からは後でこっぴどく叱られてしまいました。もし点呼で立っていられない等になっていたら…どんだけ4年生に叱られたのだろう。考えただけでゾッとします。
精神的には少し落ち着いてくる
少し気を抜いて酔ってしまう程ですので、精神的には少し落ち着きが出てきます。入校当初は周囲全部が敵って感覚で神経を研ぎ澄まし、目つきがギラギラしていました。その頃に比べると、肩の力が少し抜けていたように思います。
肉体的にはかなりの変化が起きている
肉体的にはちょっとびっくりします。4月の入校当時、受験勉強で太ってしまった奴や逆にガリガリに痩せてしまった奴など、腕立て伏せ10回も全然無理な同期が結構いました。この6月あたりになると、太っていた奴は痩せて体重が減り、痩せていたやつは太って体重が増えます。体重の増減は人それぞれですが、共通しているのは筋肉量は皆同じように増えていることです。
最初は腕立て伏せ30回を同期で合わせてやることすら出来なかったのに、ほぼ全員が50回は余裕で合わせられるようになります。そりゃあ毎日朝起きてすぐにダッシュで点呼に出て、汗をかくくらい必死で掃除し、体育会系のクラブ活動をし、何かあればすぐに腕立て伏せをやるような生活をしてればイイ体にはなりますよね。
私の場合は余分な脂肪が落ちて体が引き締まる方だったので、夏休みに高校の同級生と再会したときに「体がちっちゃくなった」と言われてしまいました。
この時期に同室のY君が体調を崩した
少しだけ楽になって、体も変っていたこの時期。同室のY君が体調を崩しました。何とか日々の生活はこなしていたのですが、食事の量が減ってしまい、ふさぎ込みがちになり抑うつ状態になってしまいました。
原因ははっきりと分かりませんでしたが、本来なら同室の私がもっと早く気付くべきだったのかなと思います。まだまだ自分のことに必死で、Y君の状態に気をまわす余裕がありませんでした。
後悔しているわけではありません。けれど後になってから、同期同室として少しでも何かできなかったのか、自分の至らなさ度量の無さに情けない気持ちになったのは確かです。
Y君は7月の訓練期間が始まってすぐに退校の意志を出して、7月の中旬に防大を去りました。
コメント
こんにちは。楽しくお話し読ませていただきました。防大に行くことが決まった子を持つ母親です。
これで7年少年院(わかりますよね、笑笑)暮らしになるとわかっていて受験した我が子を褒めてあげようと思います。大事ですよね、慣れって。
私が学んで欲しいのは防衛学。残念ながら高校の課程にはなかったので防大に行けとせっつきました。
今の日本人おかしいです。世界的にも
歴史的にも戦争の無い時代はないのに、今の生活が何もせずに続いて行くと思ってる。
わけわからんと戦うのだけはさせたくなかったので。あと、自分の身を守る術を身に付けて欲しいからかな。
防大辞めた後もきちんと人生を歩んでいらっしゃる佐治さんのお話しから、大学生活は無駄にならないとわかり安心しました。
お母さんとしては、棒倒し見るの楽しみにしてます。選抜制なんですね。骨を折るぐらいは覚悟してましたが、命の危険もあるのですねー。覚悟し直します。
陽子様
コメントありがとうございます
今の防衛大学校は
・女子学生の受け入れが定着し
・部屋割りは各学年をミックスした大部屋制に戻った
などなど
私の在籍していた時と違っている部分が多くあるようですが
根本にある精神性のようなものは、変わらないと思います
お子さんが入学された後に経験されることと
遠い昔に防大をドロップアウトした私の見ていた世界を比べて
楽しんで頂ければ嬉しいです
意志なく防大に進んでしまった私からすると
目的意識を持って進学を決められたお子さんのことは
素直に「すごいな~」と尊敬します
心身ともに健全な防大生活を送れますよう
遠くからお祈りしております
拙い記事を楽しんで頂き
本当にありがとうございました
P.S.
棒倒しでヤバい状態になってしまったのは
半分は自業自得ですね
危ない状況からは逃げなくてはダメですね
逃げて態勢を立て直し、チャンスをねらうことが基本
玉砕気味に突っ込んで、ヤバい状態になるのは
我ながら「アホだったな~」と感じます
では、また