防衛大学校への着校を前に、夢や希望と共に緊張と不安を胸に抱えていることでしょう。その気持ち、とても良く分かります。
20数年前の3月31日、私も防衛大学校への着校のために故郷を離れました。岡山から新幹線に乗り横浜へ。横浜駅近くのホテルで過ごした夜、何とも言えない気持ちで眠りについた記憶があります。
1年生の途中で防衛大学校を辞めてしまった私ですが、4月1日に着校するあなたに向けて、ささやかなエールを送ります。
緊張や不安は当たり前です、感じるまま受け入れましょう
今まで知らなかった世界へ飛び込んでいくのですから、緊張や不安を感じるのは当たり前なのです。夢や希望といったポジティブな想いじゃなきゃダメだと、自分を追い込まないでください。
良い感情とか悪い感情という判断をせず、感じている自分自身を受け入れましょう。今あなたが感じている、何とも言えない甘酸っぱい感情を味わい、覚えておいてください。その感情はきっと、この先の支えになってくれます。
他人と自分は違って当たり前です、違いを楽しみましょう
着校すると、同期や先輩と対面することでしょう。出身地が違えば、言葉や習慣も違います。自分が常識だと思っていたことが、通じない場合だってあるでしょう。
他人と自分の考え方や習慣、常識は違って当たり前なのです。
寝食を共にする寮生活で、お互いの違う部分がぶつかる場面も出てきます。初めは理解できない、腹立たしいこともあるでしょう。でも、違いを楽しむ考え方もあることを、意識のどこかに置いておいてください。
ぶつかって反発しても、妥協ではなくすり合わせができれば、信頼できる仲間になれます。
できなくて当たり前です、思い切りやりましょう
服装や挨拶、言葉使いや所作、清掃の手順や整理整頓、寮生活において身につけることが多くあるでしょう。最初は、できなくて当たり前です。
器用か不器用かもあるでしょうし、もって生まれた要領の良し悪しもあるでしょうが、初めて経験することは「できなくて当たり前」、くらいに考えておきましょう。
何度も失敗を繰り返したって、最終的にできるようになればいいんです。失敗を恐れて委縮することのないよう、思い切りやって全力で叱られましょう。後になって振り返れば、笑い話にできるくらいの失敗をやらかしても大丈夫です。
迷って当たり前です、自分で考えましょう
着校から入校式までの間でも、入校式を済ませた後でも
「こんな場所だと思ってもいなかった、自分のいる場所はここじゃないのかも」
と迷ってしまうことだってあるでしょう。その迷いは当たり前です。
迷った時は、原点に帰りましょう。
「なぜそこにいるのですか」
「何を求めてその場所に来たのですか」
「どうして、今いる場所じゃないと考えてしまうのですか」
答えは、あなたの中にしかありません。正解も不正階もありません。誰かに相談するのはよいですが、受けたアドバイスは自分の中に取り込んで、自分で考えて答えを見つけましょう。いつまでも、手を引いて導いてくれる人がいるとは限りません。
辞めたっていいんです、何とかなります
もし、どうしても自分に合わないと感じたり、挑戦したいことがその場所にないと感じたら、辞めたっていいんです。
いじめられていると感じたり命の危険を感じるような状況になったら、迷っているヒマはありません、逃げていいんです。
防大を辞めて1年や2年を浪人として過ごしたところで、人生の時間軸の中では誤差の範囲なのです。
中途半端な時期に防大を辞め、2浪相当で大学に入り直した私でもおっさんとなる年齢まで生きていけてるのです。大丈夫、何とかなります。
ただ、入校当初のしんどさに嫌になって辞めたいと思った時は思い出して。夏季訓練期間となる7月までは、全力でやってみてください。きっと、生涯の財産と思える経験を積むことができます。
夏の暑さを感じる前に、どうしようもないと感じたら、私の存在を思い出してください。話くらいなら聞いてあげられると思います。
どうか、あなたの防衛大学校での生活に幸多からん事を祈念して、ささやかなエールとさせてもらいます。
そうそう簡単に死にはしない、やるだけやっちまえ。
では、また