防大には対番という制度があるのを知っていますか?

防大1年生にとって、上級生の中で唯一の味方(特に最初期の4月)といってもよい対番。防大には連綿と続く対番制度というものがあります。対番とは何か、そこで学んだ事の中で今でも心に留めていることをシェアしたいと思います。

対番って何だ?

防大に着校すると2年生の対番が迎えに来てくれます。この2年生の対番は、新入りである1年生に防大での生活全般を教える、いわゆる指導担当といった役割を担います。1年生が進級して2年生になれば、当然ですが次の年の1年生の対番となり、自分がしてもらったように後輩の面倒をみることになります。これがずーっと続いている防大の対番制度です。

1年生は対番無しでは生きて行けない

これは大げさではなく、本当に生きていけません。日常生活で必要な品々を買いそろえることから始まり、上級生に対する所作や言葉使い、服装の整え方や靴の磨き方、掃除のやり方や食事の方法等、全てにルールやコツがあります。これらを自分の力だけで習得するのは絶対に無理です。

また、同期の1年生と同部屋の上級生以外の上級生は基本的に敵です。廊下ですれ違うと何かを叱責されないことの方がマレで、常に緊張感いっぱいの寮生活で唯一と言って良い味方の上級生が対番の2年生です。

同期だけでなく、対番にも連帯責任が及ぶ

防大では当たり前に連帯責任を問われます。自分のミスは同期の1年生への連帯責任となりますし、多くの場合は対番の2年生にも及びます。ミスをした場合に、「お前の対番は誰だ?後で対番と一緒に部屋に来い!」と言われて4年生の部屋に対番と行くと、対番の2年生だけ叱責を受けたりすることもあります。

同期であれば、まぁお互い様な部分もあるのですが、自分のミスで対番が叱責を受けるのはかなりキツイいです。対番にきちんと教えてもらった事が出来てないのに、「1年が出来ないのは対番のお前が出来てないからだ!」と目の前で言われると、いたたまれないとはこの事かと実感できます。

対番の対番も当然います

対番の2年生も1年前は1年生だったので、対番の対番である3年生も当たり前に存在します。所属する大隊が違う事も多く、当初のうちは対番の対番に会う機会はありません。入校してしばらく経過し、少し落ち着いた段階で「対番会」なるものが開催され、初めて対番の対番とお会いしました。

対番会は、土曜日の夕方に校外の居酒屋で開かれることが多いと思います。(なぜ土曜日か?日曜日の夜は点呼があるので、1年生はのんびりしていられません。外出していても、遅くとも夕方には帰校し点呼に備えて作業着のアイロンかけ等で忙しいのです。)

この対番会では、自分からすれば何でも出来る2年生の対番が1年生だった時のエピソードを3年生の対番に教えてもらい、当たり前に自分と同じような時期があったことに安心させてもらったりしました。

今でも心に留めている大切な事

対番の2年生や、対番会で3年生4年生の対番から教わった事の中で今でも心に留めていることがあります。

「君が今やっている事・やらされている事の中で理不尽に思える事もあるかもしれない。それでも文句を言うのは止めておきなさい。何故それをするのか?どんな理由があるのか?誰もそれを言葉で教えてはくれない。でも、やっている事には何か意味があるはず、だから自分の頭で全力で考えろ。必死に考えて「意味が無い事」であるという結論が出たら、自分は同じことを後輩にしなければ良いだけのことだ。現状に文句を言ってもタダの愚痴でしかない。」

無意味に感じる事であっても、自分の見える世界が狭いから無意味に思えるだけで、実は意味のある事なんじゃないか。今、目の前にあることを楽々こなせるようになって、初めて見えてくる世界もあるんじゃないか。と言われているようで、今でも心に残っています。

行動しながらも常に考えろ、自分で自分なりの答えを見つけ出せ

退校して居場所が変わっても、私の中に残っています。ありがとうございます。

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