防大1年生の9月、夏休み明けに一発ガツンときますが割と平気です。なぜでしょう?

8月の夏休みを各々の故郷や、旅行、クラブの合宿などで過ごした後、娑婆への未練を残しつつ防大での日常に戻ってきます。夏休み明けに帰校せず、退校してしまう1年生もたま~にいますが、数としてはごく少数です。久しぶりの防大での生活、夏休みボケは大丈夫?

9月の最初は、夏休み明けなのでガツンとやられます

防衛大学校に4月に入校して7月までの4カ月間、防大での日常生活という非日常的な生活に慣れるのに必死でした。夏休みボケ?もちろんあります。何といっても数カ月ぶりの娑婆の空気です。ボケない方がおかしいです。

その点は、自分たちも経験済みの4年生です。しっかりと、9月の最初に1年生の気持と体に気合いを入れてくれます。ほとんどの1年生が、8月の夏休み中にクラブの合宿が1~2週間程度あり、体力的には劣化していないので問題はありません。気持ちの方も、帰校する時点で自分がボケている自覚はあるので、心構えはできています。

ガツンとやられるといっても、夏前までの復習といった程度ですし、こちら側の準備もできていますので、それほど大したストレスにはなりません。サウナ上がりの冷水風呂のような刺激です。

ガツンとくるのは最初だけ、すぐに夏休み前と雰囲気が違うことに気が付きます

最初にガツンとくるので、「あぁ、これからまた廊下に出るのが苦しい生活が始まるんだな~」と覚悟を入れ直します。しかしながら、1週間も経たないうちに夏休み前とは雰囲気が違っていることに気が付きます。明らかにおかしいのです。

最初は、自分達に防大での生活に対する耐性ができ、体も心も慣れたので、そんなにしんどくはないのかな?と思いました。それはそれで正解なのですが、ほんの一部です。冷静に観察すると、明らかに4年生が私たち1年生に接する態度が違っていました。

夏休み前までは、自分の部屋長以外の4年生とは可能な限り接触を避けたい、廊下ですれ違いたくない、必要最低限の会話以上はする気が全く起きない、と感じていました。実際に、4年生から話しかけられる事も、敬礼がおかしいとか服装が乱れているとかの叱責か、必要な事項についてくらいしかありませんでした。

廊下ですれ違う時も、10メートル手前からガチガチに緊張している1年生の脇を悠然と通る4年生に威圧感を感じていました。目がこえーよ。

それが、9月になると全然違うのです。1年生の側は変わらず緊張感いっぱいですれ違いざまに敬礼をするのですが、4年生から漂うオーラが消えているのです。消えているというか、全くの別物、かなりリラックスした雰囲気すら漂わせています。

ある日、前期(4月~7月)小隊長だった4年生のKさんと階段ですれ違った時のことです。私は「わっ!やばいKさんだ。また叱られるわ!」と緊張して敬礼しました。ところが、Kさん答礼を完全に忘れており、階段を数段上がったところで「おっ!わりぃな、気がつかなかった」と笑って答礼してくれたのです。Kさんの笑顔なんて見たことなかったですし、なにより答礼を忘れるなんてビックリしました。

この時やっと理解しました。夏休み前までの4年生は「鬼のように厳しい4年生」を演じていたのです。人によって程度の差はあると思いますが、これは私が対番の4年生に直接聞いて確認しました。「1年生の教育のため、あえて厳しい表情を作り、厳格な態度で接していた。」そうです。

1年生のこちら側が、自分のことでいっぱいいっぱいで、上級生の状況など想像もできていなかったこともありますが、「演じていた」と聞いた時は衝撃でした。本来の自分とは違う強面のキャラクターを作り、1年生の前では終始そのキャラクターに徹する。おっさんになった今なら、誰もが何らかの仮面をつけて役割を演じている部分があることは理解できます。まだまだクソガキだったのだな~と思います。

9月になれば部屋替えもあります

防大では4月~7月を前期、9月~12月を中期、1月~3月を後期に分けて、各々の時期で部屋替えがあります。部屋を構成する1年生~4年生のメンバーが小隊の中でシャッフルされて、新しいメンバーでの生活がスタートします。

私の場合は、前期の途中(7月半ば)で同室のY君が退校して一人で部屋を使っていたのですが、部屋替えで改めて2人部屋になりました。中期の同室は広島出身のS君。背格好が私と同じくらいで、雰囲気もどことなく似ていたようで、よく上級生からわざと間違って呼ばれてからかわれていました。

部屋長の4年生は、前期でさんざん叱られて苦手だな~と思っていたお二人でした。このお二人も、まぁ同じ人とは思えないくらい前期と違っていましたので、本当に前期とは比べものにならないくらい学生舎での生活は楽になっていました。

1年生が前期の生活を通じて、防大での生活に慣れた部分も大きいと思いますが、何よりも4年生をはじめとする上級生に防大の一員として認めてもらった部分が大きいと感じました。無理に厳しく接しなくても大丈夫だと。

生活が割と楽になってくると、改めて自分自身へ向き合います。この先、どうする?このまま職業軍人として生きる道を進むのか?それとも…この時期からやっと考えられるようになりました。

では、また

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