防大1年生の11月-開校記念祭で人生終わったかと思いました

防衛大学校にも一般の大学のような学園祭があります。毎年11月に行われる開校記念祭というものです。この時は、一般の方でも防大の敷地内に入ることができ、家族や友人などを招く学生も多いです。

学園祭定番の模擬店やステージを使った催しモノもありますが、防大ならではのもとのして、訓練の実演や観閲行進、棒倒しを見ることができます。メインイベントは棒倒し。なぜ、棒倒しで「人生終わった」と思ったのでしょう。

たかが棒倒し、されど棒倒し

中学高校時代に棒倒しを経験されたことがあるかも知れません。私も中3の運動会で経験しました。中学生の頃は、(当然ですが)殴ったり蹴ったりするのは禁止されていましたが、そんなルールは始まってしまえば関係無く、ほぼケンカのような棒倒しでした。

それでも、ケガ人が出てたような記憶はないので「たかが棒倒しでしょ」と軽く考えていました、練習が始まるまではね。

防大の棒倒しは、4大隊の勝ち抜き戦です。各大隊で選手を選抜し、大隊の威信をかけた本気の勝負となります。夏休み明けの9月になると、早くも選手の選抜と練習が始まります。選手に選ばれたら、優勝が至上命令となります。

カーテンを下ろして暗くなった集会室で、過去の棒倒しのビデオを観賞することから練習が始まります。その後、体格や性格をみて攻守の各パートに振り分けられ、細かな作戦を身体に叩きこまれます。もちろん、他大隊に作戦を知られないように緘口令がしかれ、練習も常にカーテンを閉め切った室内で行われます。

ちなみに当時も今も、私の身長は160cmしかありません。何でこんな身長で選手に選ばれたのか不思議ですが、攻撃の遊撃というパートに選ばれてしまいました。直接相手の棒を倒すというより、こちらの真意を分からせないようにかく乱する役目を与えられたのです。

「あっ、人生終わったかも」と思いました

相手をかく乱することが目的なので、写真のようなグシャグシャの中に入っていくようなことは普通はありません。入っていくフリをすることが重要なのです。

ところが、いざ始まってしまうと冷静に作戦を遂行する余裕はありませんでした。懸命に遊撃としての役目を果たそうと頑張っていたのですが、勝負の終盤に気がつけばグシャグシャの中心、棒の真下に「あぐら」をかいた状態で埋まってしまっていたのです。

まだ勝負はついていません。敵も味方も、そんなところで埋まっているヤツに気をかける暇はありません。逃げ出そうとした時には既に遅く、どんどん自分の上に人がのしかかってしまい、1ミリも動けなくなってしまいました。

あぐらをかいている姿勢で両肩に4、5人の体重がかることを、想像してみて下さい。単純に200kg以上、そ~っと乗ってくれるわけではないので、そこに衝撃が加わります。どんどん上半身が沈んでいき、最後に額が地面に着くくらいまで前屈した姿勢になった時、やっと勝負が決まりました。私たちの大隊の負けでした。

柔軟体操の経験があれば分かってもらえると思いますが、あぐらをかいた姿勢で額を地面に付けようとすると、呼吸することが難しくなります。勝負がつく寸前、一瞬ですが意識が飛びそうになり、体中は痛いし「あっ、こんなことで人生おわるのかな?」と思ってしまいました。

何とか無事に生き残ってます

勝負がついても、みんなグシャグシャの状態です。すぐにはバラバラになってくれません。それでも徐々に体にかかる重さが消えて、「おっ、生きてる。良かった~」と思ったのですが、全く立ち上がれません。あまりに窮屈な姿勢で負荷がかかっていたのでしょう、体が固まってしまっていたのです。何とか先輩に助け起こされ、肩をかりて歩くことはできました。

その瞬間はまだ興奮しているので、恐怖心はありませんでした。後になって振り返って、「あの時、もう少し勝負がつくのが遅かったらヤバかったな」と思い、急に怖くなったのを覚えています。今の体力だったら、全く持ちこたえることはできないでしょうね。

今までの人生で「人生終わったかも」と思ったのは、この棒倒しの時のみです。頻繁にあっても困りもんですが、なかなか他では味わえない経験をさせてもらったなと思います。

もう一度やれって言われても、謹んでお断りさせて頂きますけどね。

では、また

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