構造設計者になるにはしっかりとした土台が必要なのです

私が建築構造設計の仕事をやってみたいと思った時期は、大学3回生から4回生にかけての春でした。構造設計者として就職するには大学院の修士課程を修了していることを求める企業や事務所が多数です。大学院は構造設計者としての土台作りの期間なのです。

独学ではまず無理なんです

ごくまれに完全な独学で建築家になってしまう人がいます。例えば安藤忠雄先生のように。これが構造設計者の場合だと、「構造家」を自称してもまず仕事はできませんし、そもそも仕事の依頼がきません。

構造力学の理論や解析方法は、時間がかかったとしても独学で書籍から学ぶことは可能でしょう。しかし、構造設計者とは解析をするだけの計算屋ではありません。その建築にふさわしい構造とは何かを、建築家と共に議論を重ねて作り上げていく仕事です。

建築家と共に仕事をするということは、建築家のイメージをつかむことが必要です。イメージをつかむ能力を身につけるには訓練が必要であり、こればかりは独学ではまず無理なのです。

大学(建築系の学科)に進学しましょう

専門学校であっても構造設計者として就職ができないわけではありません。しかし、大学の方が多様な人材が集まってきますし、知識や技術だけでなく教養を深めることができます。できれば大学(建築系の学科)に進学しましょう。

大学に入って真面目に講義を受けるのも悪くはないですが、それだけではもったいないです。適度に遊ぶ心の余裕を持ちましょう。映画や音楽、絵画や書籍、スポーツ、人間関係、アルバイト等の生活すべてが構造設計をする糧になります。

大学の建築学科であれば、多くの人が建築家になることを目標に入学してきます。自分とは違う建築の見方や建築に対する考え方に触れる機会が多いです。大いに同期と建築に関する話をして、自分の幅をひろげましょう。

設計製図の課題で厳しいレビューを受けて落ち込むこともあります。自分のイメージを図面に落し込む技術を同期と比べてしまい、どうすれば良いのか途方にくれることもあります。同じ土俵で勝負してかなわないと思うなら、自分が勝負できる場所を見つけるチャンスです。

建築の設計ではかなわないけど、構造分野なら対等以上の勝負ができる。構造の世界であっても、解析や計算の能力では負けてるけど、構造を説明する能力を加えると勝負になる。あなたの得意な分野と組み合わせれば、勝負できる場所は必ずあります。

可能なら大学院に行っておきたい

構造設計を仕事とする場合、建設会社の設計部か設計事務所に就職することになります。建設会社や設計事務所では、大学院の修士課程を修了していることが、構造設計職能での採用条件である場合が多いです。可能なら大学院に行っておきたいです。

大学の学部でも高校までの「お勉強」とは違いますが、大学院はもっと違います。お勉強はほとんどしません、やるのは研究です。どっぷりと構造の世界に首までつかってみて下さい。自分で作った問題に自分で解決方法を出し、答えを検証してまた問題を設定する。終わりなき研究者の世界をのぞくことができます。

大学院に行ったからといって、構造設計の技術的なことは全く教わりません。技術的なテクニックを身につける土台作りとして、思考し発表し、レビューを受けて更に考えを深めます。深く考えられるようになるためだけに大学院に行っていると言っても良いくらいです。

社会に出て仕事を始めてからが本当のスタート

大学から大学院を経て、建築や構造に携わる技術者としての思考の土台はできています。自分では土台ができているのかどうか分かりにくいはずです。ですが、構造設計職能で就職した時点で、しっかりできていると判断されています。自信を持っていいです。

構造設計の技術的なテクニックは、社会に出て仕事をこなしながら身につけていきます。習得スピードの早い人もいれば、のんびりな人もいます。大学時代に作り上げた土台も、人それぞれです。他人と比べるのではなく、自分が1歩ずつでも進んでいれば大丈夫です。

いきなり全てができるようにはなりません。目の前の建築に集中して、1つずつしっかりと自分のものして下さい。カメの歩みに感じるかもしれませんが、5年も過ぎれば立派な1人前になっています。

派手じゃなく、地味でも良いではないですか。あなたのその1歩は必ず先につながります。どうぞ、焦ることなく進んで下さい。

では、また

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