竹中工務店が構造設計業務を支援するAIソフトの開発に着手。期待することはひとつ。

竹中工務店が、建設業におけるAI活用に向けた第1段階として構造設計業務を支援するAIソフトの開発に着手したと発表しました。将棋電王戦優勝ソフト「Ponanza(ポナンザ)」の開発メンバーを擁するHEROZという会社と協業して実用化を目指すようです。

2018年にプロトタイプを構築した後に、竹中工務店社内の構造設計者がAIシステムを育て、2020年には実用化。構造設計の全てを自動化するのではなく、ルーティン的な作業の70%削減が目標。

AIを活用した構造設計業務の自動化は、もっと先の未来のことだと想像していました。大手ゼネコンの竹中工務店が実用化に向けて開発に着手したことで、遠い未来ではない近い将来の現実の話となりましたね。

日本の構造設計業界ではトップクラスの竹中工務店に期待することがひとつだけあります。

「何をAIにまかせ、何を人の手に残すことにしたのか」その大まかな項目だけでも、是非とも公開して欲しいのです。

質量ともに国内トップクラスの構造設計者集団の実用に堪えるAIソフト、楽しみしかない

竹中工務店は、質・量ともに日本国内トップクラスの構造設計者が在籍している組織です。構造設計業界のトップに君臨する竹中工務店が、構造設計業務を支援するAIソフトの開発を始めた。どんなものが生まれるか、楽しみしかありません。

竹中工務店が現在の会社組織になって、もうすぐ120年になります。長い歴史の中で蓄積された構造設計に関するデータを深層学習し、竹中工務店の構造設計のエッセンスを凝縮したようなAIソフトになるでしょうね。

培ってきたノウハウと、竹中工務店の構造設計哲学が反映されたAIソフト。全てを公開したとしても、他社でそのまま使い物になるとは思えません。AIにまかせるのは、あくまで竹中工務店でのルーティン的な作業なのですから。

それでも、AIに任せる部分の大きな枠組みは公開してもらいたい。トップクラスの構造設計者の集団が、何をルーティン的な作業だと考えているのか知ることで、構造設計の業界全体の底上げにつながるからです。

創造性を上げることに集中するための自動化

構造設計業務におけるルーティン的な作業のうち70%の自動化し、構造設計の創造性を上げることに集中することが目標とのこと。何を自動化できるルーティン的な作業とみなすか。

ポイントは、「誰がやっても同じ部分」ではなく「誰がやっても竹中工務店としての基本を外さないけど、時間と手間が毎回必要となる部分」にあると考えられます。

そう考えると、自動化できる部分は少なくないと思います。市販を目的とした構造設計ソフトの会社なら、汎用性を考えると自動化できる部分は少ないでしょう。ですが、自社の構造設計思想に合った内容であれば、ルーティン的な作業の70%は無理じゃない。

そして実用化された後には、創造性を必要とする業務に構造設計者が集中できるようになります。働く時間を短くする流れの中で、やるべき業務量は変わっていない。長時間の残業が正しいとは言いませんが、持続して集中しないと業務をこなせない状況も危ないです。

ルーティン的な業務の70%とはいえ自動化できれば、その分の手間と時間を有効に使うことができます。集中すべき時に集中し、休むべき時に休める。当たり前のことが、当たり前にできるようになります。

何をAIにまかせ、何を人の手に残すのか

竹中工務店による構造設計業務へのAI活用の動きは、ひとつの建設会社が開発に着手したという話ではないのです。本当に使い物になるAIソフトに仕上げることができれば、構造設計業界全体の流れになります。

ルーティン的な作業の70%が自動化されれば、構造設計者の負担が軽くなります。構造設計者は、今以上に建物の安全性を高め、快適な建築空間を創り出すことに集中できる。

結果として、建物を使う人には安全・安心と快適性が手に入る可能性が高くなるのです。

竹中工務店が開発に着手した、構造設計業務の一部を自動化するAIソフトの全てを公開して欲しいとは言いません。

ですが、「何をAIにまかせ、何を人の手に残すのか」の大きな枠組みは、是非とも公開してもらいたいです。公開したところで、パクられて困るような小さなノウハウではないでしょ。本当に大切な構造設計のキモの部分は、人の手に残して社内で伝承して行くのですから。

後に続く者のために、どうかよろしくお願いしたい。

プロトタイプのAIソフトとAIを育てるための深層学習をセットにして販売すれば、構造設計ソフトの分野で覇権を握れるかもしれない、という小さな「おまけ」の可能性もありますしね。

どうでしょうか、竹中工務店さん。(無理なんだろうなぁ)

期待せずに実用化のニュースを待ちます。

では、また

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