友人の転職活動とは反対の内容となるかも知れませんが、設計事務所からゼネコン設計部への転職はおススメしません。逆のゼネコン設計部から設計事務所への転職は、よくある話です。ゼネコン設計部と設計事務所、同じ建築の設計という職能ですが何が違うのでしょう。
設計事務所とゼネコンの役割の違い
建物を建設する際の、設計事務所と施工会社であるゼネコンの役割は以下のように違います。
設計事務所:設計、監理を行う
ゼネコン:工事の施工を行う
設計施工一貫の場合もありますが、今回は設計と施工が別の場合についてお話します。
基本的に、ゼネコンは設計事務所の作成した設計図書(設計図や計算書)に基づいて建物を作っていきます。ゼネコンにとって設計事務所の所員は「設計事務所のセンセイ」ですので、「センセイ」として対応されます。それまでの実績や業界への影響力などで、態度が微妙に違ってくることは、人間なので当然ありえますが、基本は「センセイ」です。
たとえ、個人の設計事務所と超大手ゼネコンであっても、この関係は同じです。会社の規模の大小に関わらず、会社対会社としてそれなりに節度ある対応となります。
設計事務所とゼネコン設計部は立ち位置が違う
では、ゼネコン設計部の場合はどうでしょう?
多くのゼネコンでは、工事現場をあずかる施工サイドの発言力と設計部の発言力を比べると、
施工側の発言力>>設計部の発言力
となっています。ゼネコンにとっては、「売上や利益を生み出すのは現場そのものである」という認識があり、結果として施工側の発言力が強い場合が多いです。
上記のようなゼネコンの設計部で新卒時から働いている場合は、「そんなものでしょ、何か問題でも?」と割り切って考えらるでしょう。しかし、設計事務所で長く働いている場合は、知らず知らずのうちに「センセイ」として施工サイドに接するクセが身についていたりします。
同じ建築の設計という職能ですが、施工サイドに対する立ち位置が違います。この違いがあること知らずに転職するとかなりのショックを受けます。知っていても適応出来るかどうか…難しいと思います。
以上のことから、設計事務所からゼネコン設計部への転職はおススメはしません。ただし、例外もあります。
例外的におススメする場合とは
「現場に対して、対等に発言や発信をすることが可能な設計部であること」が、おススメする場合です。そんなゼネコンあるの?数は少ないけど、そんなゼネコン設計部はあります。
では、どうやってゼネコン設計部を見分けるのかというと。
構造設計者の業界は、わりと狭い業界です。会社の枠を越えて色々なつながりがあったりしますので、現在所属する会社の上司や先輩に世間話として聞いてみるのも良いでしょう。意外と他社のことを知っていたりします。
大学の先輩後輩や友人、知人の中で、ゼネコン設計部に勤務経験がある人に、それとなく聞いてみるのも良いでしょう。
大切なのは、ネット上の噂程度の情報ではなく、人の持つ生の情報や感覚を聞いてみることです。どんなニュアンスで話しているのか、話している人の性格や考え方を考慮して割り引いて聞くべきか、逆に割り増しが必要か。実際に会って話を聞くと、得られる情報は多いです。
転職する際には、会社の規模や給与、福利厚生だけで判断するのではなく、設計者としての立ち位置も考慮して決断して下さい。後悔しないためにも、是非。
では、また