私の子供ではなく、10歳の親戚の子供に宛てて、手紙を書く機会がありました。「手紙くらい簡単に書けるでしょ」と、余裕ぶっこいていましたが、思っていた以上に大変でした。
40代後半に入ったおっちゃんから10歳へ、想いが届くかどうか分かりませんが、何もしないよりはマシ。手紙を書こうと考えた理由、大変だと感じた部分、伝えたかった想いを残しておきます。
手紙を書こうと考えた理由
手紙を送ろうと考えた相手は、10歳になる親戚の子供です。身内の恥をさらすのですが、家族の関係がよろしくない状況の中で、ここ数年を過ごしてきた子供です。
ある出来事に対するその子の態度を聞いて、「その子は心を閉ざしかけているのではないか」と私とカミさんは感じていました。その家族の関係を改善できないけれど、その子のために何か出来ることはないか、私達夫婦で何度か話し合った結果。
このままの状況が続き、また同じようなことが起きれば、その子の心は壊れてしまうのではないか。心の逃げ場としての存在として使ってもらって構わない、という想いを伝えるために、手紙を送ることにしました。
手紙を書く時の注意点と対策
小学4年生、10歳の子供に送る手紙です。習っている漢字が少ないのは、分かっていたつもりでした。しかし、10歳の子供が読めるであろう漢字を調べると、思っていた以上に少なく腰が引けそうになりました。
漢字を気にせず、とりあえず下書き
使える漢字を気にしていては、肝心の手紙の内容に集中できません。とりあえずは、漢字を気にせず伝えたい内容を下書きです。
初めは、今の状況を私達が知っていること、どう考えているか等をつらつらと書こうとしていました。けれど、私達の考えを伝えることが目的ではなく、その子に心の避難所にできる場所があると伝えることが目的です。
私達が今の状況を「よろしくない」と感じているかどうかなんて、その子にはどっちでもいい話なのです。大人の事情に振り回され、乱されてしまった心を守るために、固いカラで閉じてしまおうとしている。
何をどう書けば、少しでも10歳の心に届くのか。それだけを考えて、下書きをしました。
言葉の使いかた、言い回しをチェックして、漢字の確認
下書きをテキストで打ちこんだら、印刷してチェック。言葉の使い方、言い回しは10歳の子供に伝わる表現になっているか。想いが先走って、大人に向けた手紙のような文面になっていないか。何度も読み返しました。
私なりに内容のチェックが終われば、漢字の確認です。保育園卒園の記念品として、娘がもらった漢字字典を横に置き、小学生で習う漢字が検索できるサイト「漢字検索システム(Post版)」も活用させてもらいながら、漢字の確認をしました。
「誰(だれ)」も「悔しい(くやしい)」も「寂しい(さびしい)」も10歳では習っていません。下書きの中の漢字を全てチェックし、小学4年生の範囲をこえていれば、ひらがなに赤で修正を入れます。
下書きの漢字チェックが終われば、テキストで打ちこんで印刷して再度チェック。修正のモレはないか、内容の分かりやすさも改めて確認。ここまでで、手紙の草案ができました。
草案をカミさんにチェックしてもらい、手書きで清書
でき上がった草案を、カミさんにチェックしてもらいます。想いが伝わる文面になっているかどうか、私自身では見えない部分を見つけてもらうためです。
内容はもちろん、言葉の使い方にも注意してカミさんに読んでもらって、何とかOKをもらえました。カミさん曰く、「まぁ、伝わるんちゃう」とのことです。
最後は、手書きで清書です。何が苦手って、この手書きが一番の苦手です。昔から字が汚く、判読不能だと言われ続けてきた自筆。それでも、印字されたものより手書きの方が、想いを託せると信じて書き上げました。
手紙だけでなく、モノに頼る
当初は、手紙だけで想いを伝えようと考えていました。けれど、長々と私の想いを手紙に書くより、何かしら役に立てるモノへの説明の形を借りた方が、想いが伝わりやすいのではないかと考えました。
手紙と一緒に贈ったモノは、カギ付きのノートと本です。
カギ付きのノートは、友達や親にも言えない相談できない気持ちや感情を、書き出すために使ってもらいたくて選びました。誰にも見せない、見せる必要のない自分だけの秘密のノート。ポジティブな気持ちも、ネガティブな感情も全てぶつけてもらいたいです。
本は、昨年(2017年)他界された日野原重明先生が、10歳の子供に向けて書かれた「十歳のきみへ―九十五歳のわたしから」という本です。命の大切さ、大切な命の使いかたについての日野原先生の想いを、分かりやすく書かれた本です。
本は気が向いたら読んでもらえれば嬉しいですし、ノートは側に置いておいてくれるだけでも構わない。少しでも心のよりどころになれば、それでいいと思っています。
手紙で伝えたかった想い
私が手紙で伝えたかった想いは、シンプルなものです。
今、あなたが置かれている状況に対して、あなたに何の責任もない。間違っても、自分が存在するからこんな状況になったなんて、思わないでもらいたい。心の安全基地である家庭を、安心できない場所にしたのは、あなたじゃない。
忘れないでいてほしい、あなたは独りじゃない。頼りないかもしれないけど、あなたの心を気にかけている私達がここにいる。誰かに聞いてもらいたいなら、いつでも言ってきてほしい。
伝わらなくてもいい。本人はそれほど深刻ではなく、単純に今の状況が嫌って感じてるだけなのかもしれない。的外れなことをしているのかもしれない。それでも、何もせず後悔するぐらいなら、何かをしておきたかった。
子供に向けた手紙は、実は私自身のためだったのかもしれません。
それでも、届け。